賃貸事務所の心をつかむための施策
建物に大きな変更があれば建築確認の申請し直しということになり、買い主に対する建物に関するそれまでの説明内容が変化してしまうわけだから、営業行為そのものも一からやり直しということになる。
そんな無駄なことは分譲業者も望まないだろうから、売買契約は建築確認以後にという一つの区切りを設けておけば、契約済みの買い主に迷惑がかかるような工事途中の変更は生じないだろうというのが法律の趣旨なのだ。
ところがここに、机上の法律と現場の実態との聞のズレがある。
たしかに分譲業者とて、申請し直しというような変更は望まないわけで、工事内容に関する大きな変更は発生させないように努力する。
けれどもそれはあくまで自分たちの余計な手聞を生じさせたくないという、いわば分譲業者本位の理屈によるものなわけだ。
自分たちの手間にはまったく影響が出ないような小さな変更は、分譲業者にしてみれば発生させないように努力する理由さえ見つからない。
つまり現実の工事現場においては、大きな変更はなくても、小さな変更はそれこそたくさんある、と思っていたほうがよい。
一般的に建築工事というものは、必ず追加工事項目が発生するといっても過言ではない。
設計図書があっても実際に施工しながら現場で打ち合わせすることが多いことから、どうしても当初契約した工事金額をオーバーするような追加工事項目が少なからず発生してしまうのだ。
分譲業者とすればマンションの売り出し価格は決定しているわけだから、工事金額が上乗せされれば、原価がふくらみ自分たちの利益を圧迫することになる。
そのような事態は極力避けたいので、追加請求が起きないように現場で調整するのである。
ではどうするのかというと、追加工事金額に見合った減額工事を変更工事として発生させてプラスマイナスゼロに収めるのだ。
契約済みの買い主は、パンフレットやモデルルームで説明を受けたことについてはしっかりと記憶に残しているだろうから、それは変更できない。
もちろん重要事項説明書類で説明済みの内容についても変更できないので、それ以外の場所で減額工事をひねり出すことになる。
具体的には、部屋の中については使用する壁紙や床のカーペットまで説明してしまっているから、変更しやすい箇所となるとどうしても共用部分ということになる。
たとえばパンフレットや重要事項説明書類に、「外壁タイル貼り、一部吹き付け塗装」となっていれば、値段の張るタイル貼りの面積を少なくして、安価な吹き付け塗装の面積を増やすのである。
外観のパースにも表現されていないような、隣地の建物との間で自に触れにくい位置にある外壁のタイル貼りを中止するというのがこの場合の常套手段だ。
面積を調整するのではなく素材そのもののグレードを落とすという方法もある。
外壁を覆う塗装にしろタイルにしろ、質も値段もピンキリなのである。
購入者に現物を見せていなければ、似たような色だけれども耐久性で劣る安価な素材に変更することで、大幅な減額工事項目になる。
共用廊下の床の素材を低ランクのものに落としたり、廊下や階段の照明器具のグレード変更や器具の数を減らすというのも、よく行われる減額工事項目の例だ。
これらの変更工事項目はすべて、モデルルームやパンフレットには触れられていない。
それでは買い主は、こういう変更を未然に防ぐために、変更前の建物の状況について知りようがないのかというと、そんなことはない。
多くの買い主が見すごしているもう一つの大事な販促ツール、つまり閲覧設計図書にはすべて明記されている。
閲覧用の設計図書にはこのような共用部分に関する細部の説明も書き込まれているはずなのに、買い主のほうから設計図書を聞いて微に入り細にわたる説明を求めることはまずない。
先にも述べたように、モデルルームを見学すればそれですべて理解したつもりになってしまう買い主がほとんどだからだ。
分譲業者は、設計図書に異常な興味を示すやっかいな買い主がいつ現れはしまいかと内心ビクビクしながら、多くの買い主の誤解にずいぶん助けられているのである。
契約締結前に説明させられれば、業者としてもその内容を簡単には変更できなくなる。
逆に説明がなければ、そういった共用部分に関する細かな内容は、契約の際の重要事項説明書類にも書き込まれていないので、いくらでも変更可能ということになってしまう。
もちろん法律に触れるような変更工事ではないので手抜き工事ではない。
こうして、自分が購入した住戸の玄関の軒先に当初はあったはずの電灯をはずすよう現場にいつの間にか指示が出ていたり、共用廊下の床の仕上げが妙に靴音の響く安価な素材にこれまたいつの間にか変更されていたとしても、まずほとんどの買い主が気づかないのである。
青田売りの第二の問題点、つまり、手付金や中間金の保全措置については、宅建業法の第四一条に規制がある。
手付金や中間金を合わせて条文では手付金等というのだが(以前は前金といっていたのが昭和六三年の同法の改正でこの用語も改められた)、売り主が業者の物件を工事完了前に売買するとき、授受される手付金等の額が売買代金の五パーセントまたは一OOO万円を超える場合には、買い主への所有権移転登記をするまでの問、売り主は手付金等の保全措置を講じなければならない。
それには二つの方法がある。
一つは分譲業者が金融機関、あるいは建設大臣が指定した手付金等保証機関との間で保証委託契約を締結する方法。
もう一つは、保険事業者と分譲業者が保証保険契約を締結する方法である。
前者の場合は、業者が銀行等との間で保証委託契約を結ぶと、その銀行からは手付金等の返還債務を連帯保証することを約束した保証証書を交付してくれるのでそれを購入者に渡せばよい。
後者の場合も同様で、損害を填補するという保険証券を保険事業者に発行してもらい、これを購入者に渡すのだ。
いずれにしても、業者は保証証書等を購入者に渡さないかぎり、一定金額を超える手付金等を受け取ることはできない。
違反すれば宅建業法の第六五条二項二号により一年以内の期聞を定めて業務の全部または一部の停止を命ぜられることになり、同法第六六条九号によって、情状の特に重いときには免許を取り消されることもある。
ところがそれにもかかわらず、業者の中には買い主がこのような知識を持っていないことにつけ込んで、手付金等の保全措置などまったく取らないまま一OOO万円を超えるカネを平然と受け取っている者もいる。
よくあるのは、手付金については保証証書を発行したけれども、その後受領した中間金についてはなにも保証がされていないというようなケースだ。
分譲業者は、買い主へ所有権移転登記がされるまでの間に受領したすべてのカネについて保証しなげればならない。
したがって中間金を受け取るのであれば、業者はまたあらたにその金額に見合った額を保証する旨の保証証書を作成しなければならないのに、それがなされていないのである。
買い主にしてみれば、こういう悪質な業者に対しては、保証がないかぎりカネの支払いはいっさい拒否するという姿勢を貫かねばならない。
しかし中には、仮に保証がされていたとしても一OOパーセント安心はできない、という意見もある。
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